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4Kデジタル修復版『ムクシン』感想、考察。ネタバレあり。ヤスミン・アフマド監督の名作を東京国際映画祭で鑑賞。


引用:映画.com


東京国際映画祭にて、マレーシアの宝ヤスミン・アフマド監督の『ムクシン』を観てきました。
切ない初恋と家族愛、はじめから最後までとにかくあたたかな愛に溢れる名作です。

評価88点  
 〔2020.11.4投稿〕
 

『ムクシン』作品情報

監督:ヤスミン・アフマド

キャスト:モハマド・シャフィー・ナスウィップ、シャリファ・アルヤナ、シャリファ・アマニ

『ムクシン』は2006年のマレーシア映画です。

監督は今は亡きマレーシアの宝ヤスミン・アフマド
2003年『ラブン』でデビューし、オーキッドという少女を主人公にした『細い目』(2004)、『グブラ』(2005)、『ムクシン』(2006)の3部作を製作しています。

東京国際映画祭やベルリン国際映画祭などで世界的に評価されました。その後『ムアラフ‐改心』(2007)、『タレンタイム~優しい歌』(2009)を発表し、さらに注目を集めますがその直後51歳の若さで脳内出血により亡くなっています。

多国籍国であるマレーシアに生きる人々を愛いっぱいに生き生きと描く作風は今でもたくさんのファンに指示されています。
個人的にも大好きな監督の一人です。

『ムクシン』感想、考察。ネタバレあり。

雨に打たれながら家族で仲良く歌を歌い、踊るシーンからはじまる本作。
ラストは製作スタッフもみんな集まって歌い、とても和やかな雰囲気で踊ったりじゃれ合うなどしてエンドロールへと続きます。

その幸せな空気感があまりに自然なので、映画全体がとても穏やかでどこか懐かしさを漂わせていました。
この多幸感は簡単に感じられるものではなく、ヤスミン・アフマド監督の過去作『ラブン』や『タレンタイム』などと同様に、本作もあたたかな気持ちにさせてくれるヒューマンドラマだと言えます。

本作は、オーキッドに恋をした少年ムクシンのひたむきな恋心が繊細に描かれています。
オーキッドが座りやすいように自転車に布を巻いてあげたり、もっと近くにいたい、触れていたいという思いがオーキッドに伝わらなかったり、もどかしいムクシンの気持ちがひしひしと伝わってきて胸が締め付けられます。

オーキッドの方が精神的に幼く(年齢も2個下)、ムクシンの本当の気持ちに気づいて素直になったころにはもう彼はいませんでした。
初恋は叶わないから切なくて美しい。というけれど本当にその通りですね…。

また、家族愛というのも大きなテーマで、隣家からねたまれるほど仲の良い両親とその娘のオーキッド家。この微笑ましさも監督の過去作同様ふんだんに描かれています。

お手伝いさん目線の発言が絶妙でおもしろいです。夫婦が一緒にお風呂に入ってるのを見て「はじめは気持ち悪かったけれどもう慣れたわ」と話すシーンはコミカルで印象的です。このくだりは『細い目』(だったかな?)にも登場していましたね。

本作を観ていて驚いたのが『細い目』に出ていたキャストが出演していたことです!
『細い目』を観ていない人にはネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、オーキッド3部作をハッピーに締めくくってくれて本当に胸が熱くなりました。
『細い目』は本作以上に切なくも美しい青春映画なので、観ていないひとは必見です。

とはいえわたしは、オーキッド三部作の『グブラ』を観れていないのでまだ三部作完結できていません…。どうにかして観たいところ。

2020年東京国際映画祭一本目でした。

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