〔2020.9.4投稿〕
もくじ
『マティアス&マキシム』ネタバレなし感想。
なんだかいつものドラン作品と違う。不思議な親近感を抱きました。
ハイセンスな映像表現や世界観を作り上げる音楽のチョイスは相変わらず素晴らしいものの、そこに特別な世界があるのではなく、私たちの生活の延長線上で起きている現実事として見ることができる作品だったと思います。
ドラン監督作品といえば、『Mommy』で第67回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、『たかが世界の終わり』では第69回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞しているまさにカンヌに愛された映画人。
ですが、本作は2019年の第72回カンヌのコンペティション部門に出品された際、あまり評価が高くありませんでした。
斬新さや先鋭さは過去作と比べると確かに劣るのかもしれません。一作前の監督初の英語映画となった『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』と比べても地味な印象があるのは否めないかも。
しかし、これまでのドラン作品に無かったゆるいぬくもりのようなものが感じられて、監督の新たな挑戦を見れたようで嬉しかったです。そして役者としてもまだいろんな可能性を見せてくれるのだと期待も膨らみました。
本当の友人たちとの作品作り
今回のキャストはドラン監督自身の本当の友人たちだそうで、「彼らと共に故郷のケベックで映画を撮る。」ということにこだわって製作された作品だということ。意味のなさそうな会話や何気ないじゃれ合いが出す自然体の空気に納得がいきました。
65㎜フィルムで48日間で撮影されたという映像は、郷愁と瞬間に詰まった切なさで溢れています。
そして、顔に痣があるキャラクターに込められたのは、コンプレックスを抱えて生きる人の苦悩ではないでしょうか。周囲からの目を気にして生きている人の救いとなるのは友情や愛に他ならないと感じました。
劇場公開は9月25日から。初秋にぴったりの作品!公開されたら劇場に観に行きます。
作品情報
【監督・脚本・編集】 グザヴィエ・ドラン
【キャスト】 ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス (マティアス)
グザヴィエ・ドラン(マキシム)
ピア・リュック・ファンク(リヴェット)
サミュエル・ゴティエ(フランク)
アントワン・ピロン(ブラス)
アディブ・アルクハリデイ(シャリフ)
ハリス・ディキンソン(ケヴィン)
アンヌ・ドルヴァル(マノン)
【撮影】アンドレ・デュルパン
【音楽】ジャン・ミッシェル・ブレ