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『アンモナイトの目覚め』感想、考察。繊細かつ赤裸々に恋に揺れるふたりの女性を描いた傑作!ラスト後のふたりの行方予想。

『アンモナイトの目覚め』を観ました。
繊細で赤裸々で、情熱的な恋愛映画の傑作でした!
おすすめ!
評価95点   

『アンモナイトの目覚め』作品情報

監督:フランシス・リー

キャスト:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン、ジェマ・ジョーンズ、ジェームズ・マッカ―ドル、アレック・セカレアヌ、フィオナ・ショウ

『アンモナイトの目覚め』あらすじ。ネタバレなし

1840年代、イギリス南西部の海辺の町ライム・レジスにメアリー(ケイト・ウィンスレット)は母親と二人で暮らしていた。近くにある海に面した岩場でアンモナイトなど化石の採掘をして生計を立てていた。
そこへ、化石収集家のロデリック・マーチソン(ジェームズ・マッカ―ドル)が訪れ、流産によって生気をなくした妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を数週間預かってほしいと頼み込む。

報酬をもらうことで請け負ったメアリーだったが、シャーロットとは折り合いがつかなかった。しかし寒空の中、海水浴をしたために寝込んでしまったシャーロットを看病していくなかで少しづつふたりの心の距離が縮まっていく。
 

『アンモナイトの目覚め』感想、考察

ふたりの生き生きとしたキャラクター

とても繊細かつ丁寧に、ふたりの女性の人間性が生き生きと描かれていることに感動しました。

メアリーを演じたケイト・ウィンスレット、シャーロットを演じたシアーシャ・ローナンそれぞれが流石の演技力だというのはもちろんのこと、人物像がはっきりと力強く感じられたのです。まるで実在するふたりを見ているような感覚。(実在の人物がモデルのようですが)

フランシス・リー監督の前作『ゴッズ・オウン・カントリー』でも主役のキャラクターが本当に生き生きとしていたのが印象的でした。だからこそ、リアルに感じられるしその後の人生が続くように思わせることが出来るのだと思います。

こういった同性愛の物語でありがちな「禁断の」「結ばれない」というようなイメージとは違い、その主導権や選択権は本人たちにゆだねられているというのが大きなポイントです。

ただ美しく心を寄せ合い結ばれたふたりが周囲や時代に引き裂かれるのではなく、彼女らの信念や心の移り変わりが全てだということ。

同性のロマンスがおとぎばなしのように現実離れしたもの、というフィルターをとっぱらう潔さとリアルを感じさせます。

立場も生まれ育った環境も全く違う人物同士が、どうやって心を通わせていくのか。
彼女らの恋愛の結末はどうなるのか。気になって仕方がなくなるのです。

それでいて、フランシス・リー監督は前作然り本作でもラストに必ず、未来への希望を示してくれます。それは、時代や場所が違っても現代のどの場所でも同様のものだと言えるでしょう。

情熱的で赤裸々で、それでいて心に火が灯るような素晴らしい作品だと思います。

印象的な演出の数々

前半では、化石採掘のために基本的に地味な服装で泥だらけになって過ごすメアリーの手元が印象的に映し出されていました。

職人、労働者の手。そしてそれが好きな人に触れる柔らかなタッチに変わっていく。心のすれ違いも思いやりも手のカットに凝縮されていたのが印象的です。終始アップショットが効果的でした。

そして、音楽があまり使われていなかったのも特徴的です。
音楽がなくても十分に2人の心が動揺したり、熱く揺らいだりするのは伝わります。その目配せや結構ストレートな感情表現で分かりやすいのですが、セリフで多くを語らないのも見事だと言えるでしょう。

これが二作目の監督作っていうのは信じられないほどの才能…。もう、すごい。。

※以下ネタバレしています。ご注意ください。

ラストシーン後の2人の行く末

ラストシーン

シャーロットが、自分専用の部屋を自宅に用意して同居しようと提案したことに対して、拒否して博物館に逃げるようにむかったメアリー。
そこには、ぎっしりと男性ばかりの肖像画や男性モチーフの石像が並んでいます。

このシーンでは、男性優位の社会で同性愛を育むことはそうたやすくないと暗に示しているようでした。

そして、化石のショーケースをはさんで見つめ合ったメアリーとシャーロット。
シャーロットの潤んだ瞳からは、どうにか一緒に居てほしいという切実な想いが伝わってきます。

対するメアリーも、力強い眼差しで見つめ返します…。

ここでエンドロールに入ります。その後のふたりはどうなったのか?

これは私なりの解釈ですが、メアリーはきっとライム・レジスでの化石採掘の仕事を辞められなかったのではないでしょうか。

価値ある研究ではなく、あの泥にまみれながらも採掘する環境を愛していてして、それが自分なのだと自覚していたからです。

しかし、シャーロットとの関係は手放したくない。遠距離でひそやかに定期的に会うことで愛をはぐぐんだのではないか、と希望を込めて予想します。

もしかするといずれシャーロットが夫との子を生むという展開があるかもしれませんが、一度子どもを亡くしているという経験と夫婦仲は冷めていることからシャーロットは結婚しながらもこころは自由でいられるように思えます。

かといって離婚すれば、仕事の経験もなく料理もろくに作れない(メアリーの家事の手伝いっぷりから想像…)シャーロットは路頭に迷うはず。結婚生活は続けながらも心はメアリーに寄せるという人生を選ぶことも可能だと感じました。

生き方は彼女たちが選べるのだと信じたいです。

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