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映画『佐々木、イン、マイマイン』感想、考察ネタバレなし。佐々木コールが耳に、心に残る青春映画。


『佐々木、イン、マイマイン』を観ました。
青春時代のリアルな日常を切り取りながら現代社会に生きる多くの人々にエールを送る物語です。

評価点79点  
 〔2020.12.2投稿〕
 

『佐々木、イン、マイマイン』作品情報

監督:内山拓也

脚本:内山拓也、細川岳

キャスト:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理、鈴木卓爾、村上虹郎

佐々木役の細川岳が自身の同級生の友人をモデルに、監督の内山拓也と共に製作した映画です。
監督の内山拓也は初監督映画の『ヴァニタス』でPFFアワード監督賞を受賞し、King GnuのMVなどを手掛けています。

『佐々木、イン、マイマイン』あらすじ

27歳俳優志望の悠二(藤原季節)は、高校卒業後上京するも役者として芽が出ず、工場で流れ作業の仕事をこなすだけの無気力な生活をおくっていた。

高校の同級生の多田(遊屋慎太郎)と偶然再会して、同級生の佐々木(細川岳)のことを思い出す。

はやし立てると全裸になって踊ったり、いつでも奔放にまわりを巻き込む性格の佐々木は仲間内では異質なヒーローのような存在だった。

悠二に舞台の仕事が舞い込み、役を演じているうちに過去の佐々木との思い出が蘇る。そんな中、悠二に突然佐々木から電話がかかってくる。

『佐々木、イン、マイマイン』感想、考察。ネタバレなし。

多くの人にエールを送る青春映画

学生時代のリアルな男同士のふざけ合いを自然に描きながら、問題を抱えた家庭の内情に触れた作品でした。

青春映画としてあの頃の喜びや痛みを生々しく切り取っていると共に、現代社会でもがきながら生きている人々の背中を押すような映画ともいえるでしょう。

今の自分を作っているのは過去に出会った人々や出来事です。悠二にとって佐々木がかけてくれた言葉や彼と関わる中で感じた気持ちが、改めて自分を奮い立たせるきっかけとなったのです。

何にでもなれると思っていた10代のころと、社会に出てぶつかる壁とのギャップは多くの人が感じたことがあるでしょう。
あの頃の輝きや高揚感を思い出すことで複雑な感情が芽生えるのは当然です。本作はその複雑な感情を、未来への希望に昇華した映画です。

鑑賞後に佐々木コールをしたくなる不思議な感覚に襲われました。それは、製作側の祈りやエネルギーを感じられるあのラストシーンのせいでしょう。

キャストの魅力

佐々木役の細川岳のあまりの佐々木感。一言喋れば、あ、佐々木だ。と思ってしまう不思議な説得力が凄いです。特徴的な声に魅力を感じられます。

彼は本作の発案者であり、俳優の仕事を辞めようか迷っていたところでどうしても撮ってみたかったのがこの映画だそうです。
本作が大衆から共感を得られなければ俳優を辞めようと思っていたとか。

悠二役の藤原季節は、今泉力也監督の『his』での熱量のある演技が印象的でしたが本作でも力強い眼差しが光っていました。

女優陣も良いキャスティングで、『ハローグッバイ』や『お嬢ちゃん』の萩原みのりは言うまでもなく素晴らしい演技でした。
別れて未練のない男の家に住み続ける気持ちをまったく想像できなかったので、どうにも共感はできませんでしたが…。

実は一番目を引いたのは、苗村役の河合優実。結構ためてから返事をするシーンの表情や話し方が強烈に印象に残りました。出演作を観たことがなかったのですが注目したいです。

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