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Netflix映画『不都合な自由』感想、考察。ネタバレなし。大人の再出発を描いたヒューマンドラマ。静かな良作。

2020年10月22日


〔2020.10.22投稿〕

淡々としてるけど人生につまづくおとなの再出発を丁寧に描いたヒューマンドラマでした。
ドラマシリーズ「トランスペアレント」のジェイ・デュプラスと『ブックスマート』のケイトリン・デヴァーすごく良かった!
ミニシアター系の雰囲気でしっとり楽しめる映画だと思います。

評価点72点

Netflix映画『不都合な自由』作品情報

監督:リン・シェルトン

脚本:ジェイ・デュプラス、リン・シェルトン

キャスト:イーディ・ファルコ、ジェイ・デュプラス、ケイトリン・デヴァ―、ベン・シュワルツ

監督のリン・シェルトンは急性白血病により2020年5月16日に54歳の若さで亡くなっています。

監督のリン・シェルトンについて

グレタ・ガーウィグとジョー・スワンバーグが監督脚本を務めた『Nights and Weekends』(2006)にジェイ・デュプラスと共に出演しているほか、『Lucky Them』(2013)ではトニ・コレット、オリバー・プラット、ジョニー・デップらと共演しています。

2006年40歳の時に映画『We Go Way Back』で監督業をスタートさせ、同作品はスラムダンス映画祭で作品賞を獲得しました。映画編集の経験も多数あり、その後は監督業に注力していました。

監督脚本を務めた『Humpday』(2009)ではマーク・デュプラスを主演にむかえ、サンダンス映画祭で特別審査員賞を受賞しています。

監督、脚本を務めた作品はほかに、エレン・ペイジ、ローズマリー・デウィッド、アリソン・ジャネイ出演の『Touchy Feely』(2013)やエミリー・ブラント、マーク・デュプラス出演の『ラブ・トライアングル(原題 YOUR SISTER’S SISTER)など多数あります。

2020年にはリース・ウィザスプーンとケリー・ワシントン主演のドラマシリーズ「リトル・ファイヤー~彼女たちの秘密~」でエミー賞にノミネートされました。(こちらはAmazonプライムで視聴可能。)

デュプラス兄弟との共演作などが多く、マンブルコア畑の人のような印象もありますが、「ザ・モーニングショー」などで親交があったリース・ウィザスプーンとの関係が深く、その早すぎる死は映画界全体に衝撃をもたらした出来事でした。

 

Netflix映画『不都合な自由』感想、考察。ネタバレなし。

映画『ブックスマ―ト』で自身のジェンダーに迷いながらも成長を見せる魅力的な主人公役を演じていたケイトリン・デヴァ―の出演作ということで観てみました。

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クリス役のジェイ・デュプラスは、俳優マーク・デュプラスの兄です。
この兄弟はNetflixとコラボ企画を進行中で、『パドルトン』(2019)『ブルージェイ』(2016)のどちらも大人向けヒューマンドラマとして非常にクオリティが高くおすすめな映画となっています。本作はそのデュプラスブラザーズプロジェクトの一作です。

それはさて置き、本作なかなかの良作でした。無実の罪で逮捕されていたクリス(ジェイ・デュプラス)が釈放後にそれまで相談をしてくれていた女性キャロル(イーディ・ファルコ)に恋い焦がれ、彼女の自宅を訪ねていきます。

想いを伝えるものの既婚のため応えられないと返事をするキャロルでしたが...。というのが物語のはじまり部分です。

人生につまずきながら、どうにかもがき生きている大人たち。
どんな失敗や壁にぶつかってもやりなおせるということを静かに描いていました。

キャロルの娘ヒルディ役を演じたケイトリン・デヴァ―、両親の不和を感じつつ心を閉ざす思春期の少女の姿を繊細に演じていました。

ちょっと影がある役がどこか似合うような気がします。大人になりきれず敏感にまわりの空気を感じ取ってしまう年頃の少女を好演していました。

母親が「わたしが何かした?」と怒りながら尋ねるのに対して冷静に「この年頃の子はみんなこうだよ」というのがとても印象的でした。たしかに…。

本人にもよくわからないモヤモヤ感が親への反発に現れてしまう、そんな時期なのかもしれません。身に覚えがなくもなぁ。
ヒルディの場合はそばに寄り添ってくれる存在が欲しかったのでしょう。

社会復帰とまわりの環境になじむよう努めながらキャロルへの想いを密かに抱くクリスを演じたジェイ・デュプラスの演技が圧倒的に素晴らしかったです。

怒りと憤りをかかえながら、ほっとけない雰囲気が溢れ出ています。
おさえられない恋心を伝える表情はなんだか子どもみたいで、ちょっと頼りなげな様子が彼にぴったりだったと思います。

ドラマシリーズ「トランスペアレント」でセックス依存症の青年役を演じたのがとても印象的だったのですが、本作でも少しクセのあるキャラクターを見事に演じていました。
本作の脚本にも携わっていたからその世界観を上手く表現できたようにも思います。

全体として観ると家族の絆を描いた内容で、淡々としながらも心の機微を丁寧に描いた映画といえるのではないでしょうか。

とくに前半はわりとスローペースに物語が進むのですが、とあるアクシデントが起きたあたりから物語が急展開していきます。そこからとくに面白味が増します。

大人同士のいざこざの中に思春期の少女の成長がうまくマッチし、ほどよいバランスを保っていたといえます。

ストーリー全体はわりと地味ですが、ラストに救いがあったので最後まで観て良い印象が残った映画でした。

ミニシアター系の雰囲気がすきなひとにはおすすめです。作品の雰囲気が結構好きだったので、監督の死は本当に残念です…。

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