
映画『スワロウ/Swalllow』観てきました。食べ物ではないものを飲み込みたい衝動に駆られる女性の孤独と葛藤を描いたヒューマンドラマです。
サスペンスというよりは人間の心理や現代社会の闇を描いた物語で、見応え十分でした。おすすめ!
評価80点
▽鑑賞直後の感想▽
飲み込むことで得られる自信、幸福、快感。
誰かと居ても埋められない孤独感は自分の心の穴を広げていくばかり。美と狂気の混ざった世界観を赤と青で彩る映像美とヘイリー・ベネットの危うげな演技が圧巻。 pic.twitter.com/KLe8QTTPlY
— あゆみ (@AyumiSand) January 3, 2021
もくじ
『スワロウ/Swallow』作品情報
監督:カーロ・ミラベラ=デイビス
製作総指揮:ジョー・ライト、ヘイリー・ベネット、サム・ビスビー、エリック・ダビティアン
キャスト:ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザべス・マーベル、デビット・ラッシュ、デニス・オヘア、
『スワロウ/Swallow』予告編
『スワロウ/Swallow』あらすじ
ハンター(ヘイリー・ベネット)はニューヨーク郊外の豪華な邸宅で何不自由な暮らしているが、仕事優先で話を聞いてくれない夫や義両親の一見愛があるようで冷たい態度に孤独感を抱いて暮らしていた。そんなある日、ビー玉を飲み込んでみたいという衝動に駆られる。思い切って飲み込んでみると充実感と快感を抱いてしまったハンター。それから危険なものをもっと飲みこみたいという衝動は膨らんでいく。
『スワロウ/Swallow』感想、考察。ネタバレなし
だれかと一緒に居ても感じる孤独というのはとても奥深いものです。
ときに押し殺した感情が体に思いもよらない異変をもたらし、気付かないうちに悪化していくこともあるのだとこの映画では描いていました。
ハンターは異物を飲み込むことで、自信や幸福、快感を得ていきます。それが危険なものであるほど達成感を持てるのはもう人生でほかに幸せを感じる方法を見つけられない状況に追い詰められていたからではないでしょうか。
夫とその両親との関係は決して悪くはありませんが、彼らにとって都合のいい妻であり義理の娘をしてくれる存在として受け入れられていました。彼にとっては心根からの悪意があるわけではありません。
しかし、ハンターがどういう人間なのかを知らない、知ろうとしていないからズレが生じていきました。
その原因のひとつはハンター自身にもあるでしょう。彼女自身、自分のことを認められていないということが徐々に明らかになっていきます。
物語の展開から最後まで目を離せないのはもちろんのこと、象徴的に使われた赤と青のコントラストが見事でした。ハンターの美と狂気、孤独感と愛の渇望を表しているようでせめぎ合う感情を上手く演出しています。
ハンター演じるヘイリー・ベネットの演技もすばらしく、表層だけ取り繕った笑顔と本当の恐怖や怒りが溢れ出す表情に惹きつけられました。
『スワロウ/Swallow』ネタバレあり考察、感想。
※鑑賞前の人はご注意ください。
本作はサスペンスではなくヒューマンドラマだったと感じました。
ハンターの過去に迫っていくなかで、母親のレイプの過去が明かされます。そして父親に会いに行ったハンターは自分と父親は違うということを彼の口から聞くことによって出自という長年の悩み、苦しみから解放されるきっかけを掴んだといえるでしょう。
精神的に追い詰められた人が異食症という行動を起こしやすいのだとしたら、例えば出自に問題がなく幸せな家庭で生まれ育った人が社会的な要因で異食症を引き起こしてしまう場合のストーリーも観てみたいと感じました。
現代には明確な原因がなくても心を病んでしまうひとは沢山います。現代社会で蝕まれていく精神を描くような、エグみがある映画を私が好きというのが理由ではありますが。
とはいえ、2021年はじめの映画が見応え十分で大満足です!
印象に残ったシーンは、「飲み込むこと」で自信を得ていたハンターが、「排出すること」で新たな自分を見つめ直すことを象徴しているようなラストシーンです。薬による堕胎を選んだ彼女が新たな人生の入り口に立ち、決意を固めたのだと感じられました。
おすすめ!