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『足跡はかき消して』感想、評価。あらすじ、ネタバレあり。父の愛情と優しさと強さを学んだ娘の成長を描いたヒューマンドラマ。おすすめ。

『足跡はかき消して(LEAVE NO TRACE)』観ました。
父への愛と生き方に悩む少女の成長を描いた作品で、しずかながらとても感動的な映画でした。

『ジョジョラビット』での好演が記憶に新しいトーマシン・マッケンジーの控え目な演技が素晴らしくて、繊細に揺れ動く少女の心境を見事に演じていました!

評価点80点
〔2020.投稿〕

▽鑑賞直後の感想▽

『足跡はかき消して(LEAVE NO TRACE)』作品情報

監督:デブラ・グラニク

原作:ピーター・ロックの小説「My Abandonment」

キャスト:ベン・フォスター、トーマシン・マッケンジー、ジェフ・コーバー、デイル・ディッキー

監督のデブラ・グラニクは、『ウィンターズボーン』でサンダンス映画祭グランプリを受賞、アカデミー賞脚色賞を受賞しています。
本作はサンダンス映画祭でプレミア上映され、ROTTEN TOMATOESではTOMATOMATER(批評家スコア)100%と高評価を得ています。

娘のトム役のトーマシン・マッケンジーは2000年7月26日ニュージーランド出身の女優です。本作で注目を集めたのち、『ジョジョラビット』(2020)で演じたユダヤ娘役でさらに広く知られるようになりました。他にはティモシー・シャラメ主演のNetflix映画『キング』(2019)にも出演しています。

父親のウィル役のベン・フォスター『パニッシャー』(2004)や『X-MEN:ファイナルディシジョン』(2006)など多数の映画に出演しており、『ガルヴェストン』(2018)ではエル・ファニングと共演しています。

 

『足跡はかき消して(LEAVE NO TRACE)』予告編

 

 

『足跡はかき消して(LEAVE NO TRACE)』あらすじ。ネタバレなし。

イラン戦争のPTSDで人とのか関わりを持てないウィル(ベン・フォスター)は娘のトム(トーマシン・マッケンジー)と一緒にオレゴン州の山の中でテントをはり、ふたりきりで暮らしていました。

町へ食糧などの買い出しに行く以外は火おこしから自分たちで行うサバイバル生活です。

トムの姿が警察に見つかってしまったため、福祉局につれて行かれたふたりは住居を与えられ農場で暮らすよう指示されます。

トムは学校に通うことになり友人ができますが、林業の仕事をすることになったウィルはヘリコプターの音に戦中を思い出し苦しんだり、人付き合いに疲弊していきます。

 

『足跡はかき消して(LEAVE NO TRACE)』感想、考察。ネタバレあり。

サバイバルする親子ということで、ヴィゴ・モーテンセン主演の『はじまりへの旅』に似た内容と思いきや、少女の成長と父の愛情を丁寧に描いたヒューマンドラマでした。

PTSDに苦しむ父親と一緒に山暮らしをする少女が様々な人との出会いを通じて、自分の生き方を模索していきます。

言ってみれば身勝手なことをしている父親のウィルに対して、娘のトムはまったく文句を言うことなく従います。彼女がその生活に疑問を持つ前から、山での暮らしも独特なふたりのルールも当然のこととしていたからでしょう。
ですが、トムはだんだんとその生活に疑問を感じはじめていました。そんなとき支援団体によって住居が与えられ、生活が一変します。

近所の人たちと交流していく中で、トムは初めて自らコミュニティに参加しようと決めました。そのことは彼女にとって成長の第一歩だと言えるでしょう。

黙って父親についていく以前の姿勢から、自分で選択していくことを学んだトムは主張し始めるようになります。
父親を否定するのはなく、違う道を選びたいのだと冷静に伝える強さを手に入れたトムは大いに成長したと言えるでしょう。

ふたりはお別れのシーンでははとんど会話を交わしませんが、目線と表情から、互いに愛おしむ気持ちがひしひしと伝わってきます。

このシーンが悲しくもどこか清々しく感じるのは、トムの表情が決して暗くないからでしょう。父を案じながらも信じている。いつかまた会えることを望んでいるように感じられる表情のように見えました。

実は、父親役にベン・フォスターが決まったときに監督と話し合い、脚本から40%ものセリフをカットしたそうです。そのことが、より自然な空気を作り出すことに成功したといえるでしょう。

厳選されたセリフの中でも、「家はどこ?」と聞かれたときに「家はお父さん」だと答えるシーンがとても印象的でした。
娘にとって父親自身が帰る場所で、彼と一緒にいればそこが家になるということでしょう。全ては父親が決めているという意味が込められているとも言えます。

また深い山々の緑が美しくかつ迫力があり、自然がもつ生命力と過酷さが父の心を癒しつ、娘を素直に優しく育てのだと不思議と納得してしまいます。

自分の意思と生き方を選べるようになった娘と、壊れた心をそっと閉ざすことで自分を守る道を選んだ父親の対比は少し切なさがありますが、悲観的になりすぎないラストだといえるでしょう。

静かながらとても心に沁みる繊細な親子の絆と成長。そして心の弱さと強さを描いた見事な作品でした。おすすめ!

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