
Netflixで映画『ザ・ホワイトタイガー』を観ました。
これはポスターですっかりハッピーな映画だと思いきや、めちゃくちゃ見応え十分な社会派の作品でした。
おすすめ!
評価83点

もくじ
『ザ・ホワイトタイガー』作品情報
監督:ラミン・バーラニ
原作:「グローバリズム出づる処の殺人者より」アラヴィンド・アディカ著
キャスト:アダ―シュ・ゴーラヴ、ラージクマール・ラーオ、プリヤンカー・チョープラー、マヘーシュ・マーンジュレーカル
『ザ・ホワイトタイガー』ざっくりあらすじ【ネタバレあり】
2007年デリー。夜中に車を飛ばしてはしゃいでいる女性と助手席と後部座席に座る男性2人。
よそ見をして子どもを轢いてしまった。
田舎町生まれのバルラムは大家族で貧しい暮らしをしていた。頭脳明晰だったが、進学するお金がなく家業を手伝って暮らし、父は病を患ったが十分な治療も受けられず死んでしまった。
バルラムの住む町の地主である「コウノトリ」は住人から金を巻き上げていた。アメリカ留学から戻ったコウノトリの次男であるアショクの運転手になることが出来たバルラム。
アショクの妻ピンキーはインド出身だがアメリカでの暮らしが長く、カースト制度に反感を持っていた。
彼女はバルラムがアショクの父親や兄に殴られるのを見て、運転手をやめるように促していた。
ピンキーの誕生日の夜、彼女が酔ってスピードをあげて運転したせいで道で子どもを轢き殺してしまった。
病院へと連れていこうとするアショクとピンキーをなだめて無かったことにしたバルラムだったが、翌朝アショクの父親に呼びだされて、強引に自白調書を取らされてしまった。バルラムが子どもを引いたことにさせられたのだ。
しかし、その事故は警察に届けられていないのでバルラムは投獄させられずに済んだのだった。
その一件を機に、ピンキーとアショク一家の溝は広がりピンキーはアメリカへと帰ってしまった。彼女を空港へと送り届けると大金を渡されたのだった。
離婚することになり落ち込むアショク。
彼を慰め、心が通いあい使用人として信頼されていると感じたバルラムだったが、アショクに冷たくあしらわれて怒りがこみ上げる。
全てに憤りを感じ、このまま運転手でいても歳を取れば職を失うという危機感に襲われるバルラムは、少しづつアショクからお金をくすねていく。
ガソリンの転売や個人運転によってお金を稼いでいた。アショクが賄賂として大金を持ち歩いている事を知ったバルラムは割ったガラス瓶を車内に隠し持ちアショクから奪う時期を伺った。
400万ルピーを運ぶアショクを車に乗せ金の受け渡しにいくときを見計らい、アショクをガラス瓶で刺殺したバルラム。
そのまま金を持って鉄道で逃亡した。遠方で警察に賄賂を渡して、殺人容疑への便宜を図ってもらたのだった。
そして個人でタクシー会社を設立し、30名の運転手を雇う会社の経営者となったバルラム。ウェブサイトには「アショク・シャルマ」と名乗るようになっていた。
従業員が事故を起こした場合、損害賠償は運転手ではなくバルラム自ら賠償金を遺族に届け、場合によっては遺族を従業員として雇うこともした。
使用人でないことの意味を感じられて本望だと感じていたのだった。
『ザ・ホワイトタイガー』感想、考察
インドのカースト制を下層階級からぶち破るという、見応えのある社会派ドラマでした。
階級ごとの職や住居などが決まっているインドの社会制度を常識だと思って育った主人公が、次第に現状を打破しようと動きはじめます。
貧困層から起業家に成りあがったバルラムが登場するところからも物語がはじまるので、結末は見えていますが誰を殺したことによる「指名手配」なのか。どうやって成りあがったのかということが明らかになるのは後半の15~20分ほどのところです。
前半から中盤までは、運転手としての使命感と主人に従う使用人としての喜びが描かれていました。
主人の妻の思想に影響されて少しずつ現状や未来への危機感を募らせていくのですが、この部分に長く時間を費やしています。
何度も心が揺れるバルラムの姿から、いかにカースト制の社会から抜け出すのが困難なのか、自分の中の常識となっている固定概念を覆すことが難しいのかということを感じさせられました。
殺した相手の名前を名乗っていてよく捕まらないな、と思ったけれどそれだけ警察との癒着の効力が強いのだと考えると恐ろしい…。それか鉄道で遠くの土地まで来たから大丈夫だったのか?
最後のセリフがとても印象的だったので載せておきます。
「現実の悪夢は何もしなかった夢だ。怖気づいて主人を殺さず使用人をしている夢だ。
でも目が覚めたら、汗は止まり心臓の鼓動も治まる。現実では主人を殺しているから。反逆は成功です。鶏の檻から脱出しました。」