ヒューマンドラマ

『ファーザー』感想、考察。あらすじ解説。今までにない視点から描く認知症の孤独とは。隠された真実深読み。

こんにちは、あゆみです。

今日は映画館で『ファーザー』を観てきました。

観たことがない映画。衝撃でした…。

認知症の親と家族を描くというのは、テーマとしては今までもありましたが、認知症の人から見た視点で物語を描くという、斬新な映画でした。

大人向けであることは間違いないけれど、年代や立場やこれまでの経験によって感じ方がかなり変わるのではないかと思います。

私の近くの席にいたご婦人はもの凄く深~い溜息を何度もついてらっしゃいましたよ…。

私は、祖父と母のことを思い出して涙が…。

監督は本作が長編デビュー作となるフランス出身のフロリアン・ゼレール。本作の原作となる戯曲「Le Pere」でフランスの文学賞モリエール賞を受賞。

映画化された本作で、ゴールデングローブ賞の最優秀作品賞と脚本賞にノミネートされました。

アカデミー賞ではアンソニー・ホプキンス主演男優賞を受賞しています。

オリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンスの共演によって、さらに見応えがある作品となっています。

圧巻の演技というか、演技には見えないほどでした。

『ファーザー』キャスト

キャスト

アンソニー

アンソニー・ホプキンス

アン

オリヴィア・コールマン

マーク・ゲイティス

ローラ

イモージェン・プーツ

ポール

ルーファス・シーウェル

女(キャサリン)

オリビア・ウィリアムズ

『ファーザー』ざっくりあらすじ

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

ロンドンの自宅でひとりで自由に暮らすアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、たまに家に訪れる娘のアン(オリヴィア・コールマン)に介護人を受け入れてほしいと頼まれていた。

ひとりで生活できるのにしきりと介護人を手配しようとするアンに鬱陶しさを感じていたアンソニー。

ある日、家のソファーで見知らぬ男性が寛いでいた。アンソニーが恐る恐る声をかけると、彼はアンの夫だと言う。アンには夫はいないはずなのに…。

アンと名乗る別の女性が家に来たり、大切にしている腕時計がなくなったり、奇妙なことが続く毎日。

実は、アンソニーは認知症で、現実と想像が入り混じっているのだった。

パリに引っ越すアンは、アンソニーをひとりにできないので介護人を見つけようとしたり、施設に入れようとしたり、説得を試みる。

しかし、心無いアンソニーの発言や態度に傷つき、夫との関係も悪化していくのだった。

『ファーザー』感想、考察

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

認知症のアンソニーの視点から描かれる日常はあまりに支離滅裂で、自分ひとりが騙されているように感じられるものでした。

親しい家族に理解してもらえない、新しく出会った人のことは覚えられない、自分が間違っている自覚がない。

まるで夢でも見ているような奇妙さと恐ろしさを見事に描いていました。

この視点は今までなかったのではないでしょうか?

子どもやパートナー目線で、認知症の人を見守るストーリーはいくらでもあって、そういった作品が感じさせる「忘れられる悲しさ」というのは何度も観てきました。

しかし、本作はが描いていたのは、自覚すらできない恐ろしさであり「忘れてしまう悲劇」でした。本人にしかわからないその恐怖は映像化するとまさにミステリーかのよう。忘れていることにすら気づけていないのでその孤独感は想像を絶します。

悪気もなく周りを傷つけてしまうことがいかに悲劇かというのが、アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマンの繊細な表情からひしひしと伝わってきます。

つじつまの合わないシーンの繰り返しで、時系列も前後しますが、映画としての筋を通したのは部屋のインテリアや衣装でした。

父の部屋、アンナの部屋、そして病室へとアンソニーの居場所は変わります。

玄関を印象的に映し出したことや、アンの鮮やかなブルーのシャツが繰り返し登場するところがキーだといえるでしょう。

アンソニーが求めた母親

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

後半にアンソニーが母親に会いたいという話をしていました。「目が大きくて…」とその特徴を話すところから、今までアンとして登場していたオリヴィア・コールマンはもしかするとアンソニーの母親だったのではないでしょうか。

中身はアンですが、アンソニーにとっては母親を求める心理から、母親の姿に見えていたというのも考えられるからです。

写真立ての写真がはっきり写らなかったので何とも言えませんが。若いころの娘たちの写真のようで、姉の方がオリヴィア・コールマンぽかったですが。。

そう考えると、介護人のキャサリンはアンの本当の容姿だと考えられる気もします。想像でしかありませんが。

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