こんにちは、あゆみです。
映画館で『クローブヒッチ・キラー』を観てきました。
とあるきっかけから、父親が殺人犯ではないかという疑念を持ち始めた息子が、真相に迫るサスペンススリラー映画です。
主演は『荒野にて』『ゲティ家の身代金』のチャーリー・プラマー。『荒野にて』の馬との絆を切に演じ切った姿にすっかりファンになっていたので、本作は見逃せない作品でした!
父親役はディラン・マクダーモッド。『ザ・シークレット・サービス』(1993)でクリント・イーストウッドの相棒役で注目を集め、TVシリーズ「ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル」でゴールデングローブ賞を受賞している実力派俳優です。
本作、あのスティーブン・キングが絶賛しているんだから凄い…!
信じられないほど、サスペンスに満ちている!って言っているようです。
#スティーヴン・キング が奇跡の絶賛😱チャーリー・プラマー主演、思春期サスペンス!結び目に隠された殺人鬼の謎を解け🪢
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▶︎7/3〜名古屋テーク・大分シネマ5 https://t.co/pWLFGp42Cg— 映画「クローブヒッチ・キラー」公式 (@clovehitch_JPN) June 24, 2021
もくじ
『クローブヒッチ・キラー』キャスト
役 |
キャスト |
タイラー |
チャーリー・プラマー |
ドン |
ディラン・マクダーモット |
カッシ |
マディセン・ベイティ |
母親 |
サマンサ・マシス |
『クローブ・ヒッチ・キラー』ざっくりあらすじ【ネタバレあり】

(C)CLOVEHITCH FILM, LLC 2016 All Rights Reserved
信仰深い田舎町では、10年前「巻き結び(クローブヒッチ)殺人事件」が起きていた。中年女性が次々に殺され、現場にはロープの結び目が残されていたのだった。
16歳の少年タイラー(チャーリー・プラマー)は、町の住人からも信頼をよせられている父のドン(ディラン・マクダ―モット)と、母と妹と仲良く暮らしていた。
ある日、気になっている女の子と夜のドライブに出かけたタイラーは、父の車の座席の下にボンデージポルノ写真の切り抜きを見つけてしまう。
その噂はたちまち広まり、同級生から白い目で見られ、友人にも避けられるようになってしまったタイラー。
そんな中、父の小屋の床下に猟奇的なポルノ雑誌や不穏な写真を見つけてしまう。父親が連続殺人犯かもしれないと疑い始めたタイラー。
街の中でも浮いていた異教徒の少女カッシが、同じくクローブヒッチ殺人事件について調べていることを知り、一緒に当時の事件について調べ始める。
ある日、家の床下から、隠し部屋のようなものと当時の被害者の身分証が出て来たことで、タイラーはドンに事件に関わっていたのではないかと尋ねた。
ドンは自分ではなく義兄がやったことなのだと弁解する。タイラーは家族の為にも、切り抜きや被害者たちの身分書や写真をドンに燃やさせたのだった。
タイラーは学校の研修に行くことになり、妻と娘は実家に帰ることになる。家でひとり、妻の下着やヒールを身に着け首を釣った態勢などで自ら写真を何枚も撮るダン。
しかし、自分の欲求を満たせるものには程遠く、スーパーで目をつけた中年女性に狙いをさだめるのだった。
家に忍び込み、女性に襲い掛かるダン。そこに、タイラーとカッシが猟銃を持って現われる。
実はタイラーは研修に行っておらず、ダンが自宅で自ら写真を撮っている姿を見たり、スーパーで女性に目星をつける様子を見ていたのだった。
ダンともみ合いになったあげく、隙を見たカッシが後ろから鈍器でダンを殴り気絶させる。警察を呼ぼうとするカッシを止めるタイラー。
そのまま山に連れて行き、あたかも山で狩りの最中に銃の誤作動によって死んだように見せかけて、ダンを殺した。
タイラーはダンの死を悼む集まりでスピーチで、父に対して「愛している」と語るのだった。
『クローブ・ヒッチ・キラー』感想、考察。ネタバレあり。

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身近に潜む狂気
本作の魅力は、サイコミステリーとしての緊張感だけでなく人間の愚かさを絶妙にシュールに描いているところです。
それが特に現われるのが後半にかけてです。
映画の後半は、父親のドンが10年ぶりの犯行に手間取るあたりや、自ら女装して写真を撮ることで一度はその衝動を抑えようとしているシーンから人間味が感じられます。
彼の行動はどこか滑稽で、犯行の直前までテレビからコマーシャルの音声が聞こえてくるのもスリラーとしての緊張感ではなく、生活の延長の雰囲気を演出していたように感じられました。
完全に変態だし、やばすぎる奴なんだけど普通の人間でもある。というように感じさせるところが本作のおもしろさの一つじゃないでしょうか。
また、狡猾で残忍な殺人犯の顔と、ただの父親の境界線を曖昧に描くことで、狂気が思いがけない身近に潜んでいるということを印象付けたといえます。
タイラーの決断とラストの解釈

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前半は、息子のタイラーが父親のドンに疑念を抱きながらも、殺人犯ではないと信じたい思いで葛藤していました。気になる女の子とのやりとりなど、青さを感じさせる雰囲気も漂っていました。
ドンの小屋の下から怪しい見取り図が見つかり、自宅の地下から被害者の遺品を発見したシーンからは父親が犯人であることが確定し、一気にスリラーとしての要素が強まります。
そして、ドンの視点でストーリーが展開しはじめる後半からは、サイコスリラー調に変わりました。
ドンが遂に女性を殺そうとした瞬間にタイラーが登場し、時間が巻き戻る。この展開は見事で、ラストにかけての緊張感は凄まじかったです。
そして、タイラーは最終的に自ら父親を殺害したのだろうと思わせるシーンと、「愛してる」とタイラーがスピーチで言うシーンが重なりあって終わるのです。
猟銃に球が入っていなかったのは、タイラーの計算だったのでしょう。
つまり、タイラーは父親に犯行をやめるよう説得できると思っていた。
しかし、ドンは従わず、タイラーの首を締めて殺しかけたのです。だから、タイラーは反撃に出たのでした。
サイコスリラーでありながら、少年の決断が重い余韻を残す重厚なヒューマンドラマの良作ともいえます。