[記事公開日]2020.8.31
もくじ
鑑賞直後の感想

どんなに自分が嫌いだったり逃げ出したくなったとしても、そんな自分でもだれかを支える存在になり得るんだというのを感じました。あ、思い出すとちょっと泣けてきた…。芋生悠ほんっとに良い女優さんだなぁ。
評価82点
鑑賞2時間後の感想、考察。ネタバレなし。(後半シーンの演出に少し触れています)
辛い過去を抱えるタカラ。自分自信を騙しながら生きている翔太。
とあるハプニングからふたりの運命が重なり、苦しみながらも未来へ導かれていく物語。
タカラの置かれる立場というのがあまりにも悲しくて苦しく、どうやってそこから立ち直るのか考えられないほど…。
しかし崖っぷちの状況でもがき、今にも消え入りそうな表情を見せながらも諦めない。そうさせたのは、翔太の存在でした。
彼女の苦悩に比べると翔太の悩みなんて大したことないと思ってしまうものの、彼が抱える焦燥感に感情移入して先が気になって見入ってしまったように思います。
本作の魅力は、現実の暗く辛い部分を描きながらも切り取りたくなるほど美しいシーンが多いところだと感じました。
絵画のような海、舞台風の水辺、ホースの水、車のガラスの水滴。水が象徴的に美しく用いられていて、波立つ心境から、触れた希望が穏やかに広がるような心象表現が素晴らしく、内容の暗さとは裏腹にこころが解きほぐされていくように感じられました。
また、セリフがないシーンで説明する上手さがはじめから際立っていました。スナックパンを無造作にむさぼる翔太の背後に映る本の山。翔太が本当は真面目な人柄であることが伝わってきます。タカラの登場シーンの、シーツのゆらめきの演出も見事。言葉で説明するより心に焼き付く表現です。
本作の監督である外山文治の他の作品も観ようと思いました。
決して明るい余韻を残すわけではないですが、絶望や憤りばかりの世の中の救いを感じられ、人と人が繋がり合って生きていることをあらためて感じさせてくれる作品でした。
※画像は映画.comより引用